公務員試験はいくつ受けられる?併願作戦について考える

併願

公務員試験最大のメリットは、受験料が無料で何種類もの試験を受けられることです。これが一発勝負前提の資格試験と公務員試験の最大の違いと言えます。

ではみなさん実際、どれぐらいの数の公務員試験を併願しているのでしょうか?
過去の受験生の実例をもとに、様々な職種の「併願パターン」を検討してみます。

これから出願する方は必見です!



併願は可能な限りすること

結論から先に申し上げると、大方の受験生は受けられるだけ受けます

ただし、逆の「受けられない場合」には、試験日程の重複はもとより、科目がオーバーラップしてなくて受けられないことも含まれます。

したがって、まずは今までに学習した科目をできるだけ使い回せることを前提に併願先を組み立てる必要があります。

最も多く併願出来るパターンはこれだ!

最も多くの試験を併願出来るのは、やはりなんといっても大卒程度行政職の受験を考えている方でしょう。しかも法律や経済といった専門科目の対策をしている人です。

いわゆる「大卒行政系専門あり」のカテゴリーに属する人たちですね。

国家公務員試験では、ごく一部の専門職を除くとほぼ全ての試験で行政職もしくは事務職の区分が用意されています。

地方公務員も同じです。都道府県庁も政令市も全ての自治体で行政職区分もしくは事務職の区分が設けられています。

また一部の例外を除き専門試験が課されます。
法律や経済や政治や社会といった科目です。

併願先を可能な限り増やしたいのであれば、最初からこの大卒行政事務系向けに専門科目を学習しておくのが賢いやり方でしょう。

ただし、それ以外の職種の方も併願先が若干減るだけで、この記事の後半で述べる基本的な併願作戦に大きな違いはありません。

実際にどれぐらいの数を併願できるのか?

大卒行政系専門ありのカテゴリーに属する公務員受験生で、今まで最も沢山併願した人は、私の知る限り1年で21個です。

そもそも1年間にそんなに沢山大卒レベルの公務員試験があるのか?と疑問に思われる人も多いでしょう。しかし実際、探せばあるんですねえ。

今年(2019年)の試験でも、5月〜6月はほぼ毎週何らかの公務員試験が実施されます。
大は小を兼ねるの発想で教養試験のみの公務員試験まで入れれば、この2ヶ月間だけで7~8個ぐらいの試験を併願可能です(二次試験の日程重複は計算に入れてません)。

7月に入ると今度はB日程の市役所試験があります。
さらに国立大学法人等職員採用試験(厳密には準公務員)

2019年度の国立大学法人等職員採用試験は7月7日に実施されます。

9月にはC日程の市役所試験
10月にはD日程の市役所試験

さらに独自日程の市役所試験もいくつかの自治体で実施されます。
変わり種では衆議院事務局や参議院事務局、国立国家図書館に政策秘書の試験なんてのもあります。。

探せば探すほど出てきます。
何個受けられるかを競っても仕方ないので、もうこの辺にしておきましょう。



現実的に妥当な併願数

話を現実に戻して、実際のところ何個ぐらい併願するのが妥当かというと、6月末までの前半戦で4つか5つが妥当なラインでしょう。

併願先を必要以上に増やすと微妙に科目負担が増えます。

たとえば5月から6月にかけて、

  • 5月5日「東京都」or「特別区」(首都圏)
  • 5月11日「裁判所」
  • 5月19日「大阪府」or「大阪市」(近畿圏)
  • 6月9日「国家専門職」(国税専門官など)
  • 6月16日「国家一般職」
2019年度は警視庁警察官Ⅰ類が5月4日(土)に実施されるため、警視庁も併願可能です。

と順に受けていって、6月23日(2018年は6月24日)に地方上級を受験するだけでも科目負担は増えます。

地方上級の場合、今までの3つの試験では出題されなかった「労働法」や「刑法」が受験先によっては2問ずつ出題されます。
(毎年、国家一般職が終わってからダッシュで労働法などを勉強している人が多い)

ただ、地方上級は本命という方も多いので、たとえ科目負担が増えようと受験しない訳にはいかないでしょう。

しかし不用意に本命とかけ離れた余計な試験まで受験すると、無駄に負担が増加します。

前半戦と後半戦に分けて具体的な併願作戦を考える

大卒行政系専門ありの話ばかりで、それ以外の職種を志望している方には申し訳ないですが、もう少し続けます。

先ほど挙げた理由から、やはり5〜6月は4カ所か5カ所程度に絞った方がいいでしょう。
そして出来れば複数の一次試験合格を目指してください。理由は二次試験が重なることがあるからです。

複数の一次合格を勝ち取ったら、今度は二次試験の面接に備えます。
一次の筆記試験対策は、もうこれで終了です。

万が一6月までの試験でうまくいかない試験が多ければ、7月から9月に実施される試験の筆記に備える、という戦法を取ります。

夏から秋にかけての公務員試験は、教養と論文のみというところが増えてくるので、7月の頭から完全に教養科目の学習に切り替えます。
ただし「教養だけなら楽勝!」と舐めてかかると痛い目に遭います。

特に市役所の試験などは国家や地上と比べると遥かに採用数が少ないので、さらに一層気を引き締めて取り組む必要があります。
前半戦で失敗した人は再起をかけてこの「敗者復活戦」に挑んできますし、もとからこの秋の市役所試験を目指して教養の学習に力を入れて来ている人も多いのです。

また、警察官や消防官といった公安系職種を受験する人も、教養のみで受けられる市役所や国立大学法人を併願してくることがあります。もともと教養科目に特化した対策を進めてきてるので、彼らもなかなか手強いライバルです。



行政系以外の公務員受験生はどのように併願するか?

行政系公務員の併願に偏った話になったので、それ以外の職種を目指す方の併願についても触れておきます。

技術系公務員の併願作戦

まずは技術系公務員を目指す人ですが、市役所試験や国立大学法人の採用試験にも技術職の採用区分が設けられていますので、夏から秋の試験でも専門知識を活かして受験が可能です。

もちろん春は技術職区分で受験し、夏からは採用数の多い事務系の職種に切り替え教養試験だけで勝負するという方法もあります。
一般的に理系の方は数的処理や自然科学にアドバンテージがあるため、意外にも教養試験のみの行政事務系公務員に受かりやすいのです。

また、土木や建築といった技術職に限って言えば、年に複数回採用試験を実施する自治体(神奈川県や横浜市など)が増加しています。そういった自治体を秋試験で狙ってみるのも併願先を増やす上では効果的です。

人間科学系公務員の併願作戦

心理や福祉といった人間科学系職種を目指す方は、残念ながら政令市以外の市役所で当該試験区分を設定している自治体は僅かです。東京特別区は以前は秋に一部の区が心理職を採用していましたが、採用人数も少なく激戦の様相を呈していました。

平成29年度から特別区Ⅰ類に正式に「心理」区分が設置されました。 さらに2019年度から横浜市に「心理」区分が誕生しました。

このカテゴリーに属する方の主戦場は、春の国家公務員試験と地方上級試験です。年度により日程が重複することもありますが、概ね3カ所以上は併願が可能です。国家総合職(人間科学)、裁判所総合職(家庭裁判所調査官補)、法務省専門職員(人間科学)、都道府県庁や政令市の心理職や福祉職といったところが主な併願先です。

心理職公務員志望者と異なり、地方公務員福祉職志望の方は国家公務員を敬遠する傾向が強いのですが、法務省専門職員の「法務教官」や「保護観察官」は地方上級の福祉職と試験科目も重複しており、試験日程も2週間ずれているため、地方福祉職志望者の定番併願先です。

なお、人間科学系の受験生が秋の試験を受ける場合は、やはり教養試験のみで実施されるC日程市役所などを併願するのが現実的だと思います(神奈川県のように福祉職の採用を春秋2回実施している自治体もあります)。また、心理職などの人間科学系公務員受験生は、大学院への進学も視野に入れている方が多いので、公務員試験だけでなく9月や2月に実施される院試を併願するという方法もあります。

資格免許職系公務員の併願作戦

その他、保育士などの資格免許職系の受験生は、転居を伴う就職で構わないなら全国至る所で独自日程の試験が実施されています。特に首都圏の方は併願先が少なくて困るということはまずありません。ただし栄養士などは東京都を除くと採用人数も少ないため、希望のエリアで当該区分の採用が少なければ、教養のみの市を事務系区分で受験する方法が使えます。

社会人経験者公務員の併願作戦

中途採用で公務員への転職を狙う社会人経験者の方は、大卒程度の試験と比べると採用試験の日程がズレている自治体が多いので、併願先は思った以上にたくさんあります。むしろ採用情報を逃さずキャッチすることが肝心です。前年と異なる日程で実施する自治体も多いので、気付いた時には出願を締め切ってたということのないようご注意ください。

まとめ

以上、公務員試験の併願について基本的な取り組み方を述べてきました。

もちろんこれ以外の併願パターンも考えられますし、公務員だけでなく民間企業を併願するという方法もあります。したがって上述した方法が全てではありません。しかし大部分の公務員受験生にとって、いわば王道といえる併願パターンをご紹介しました。

公務員の併願先に迷っている方は、この作戦を参考にしてみてください。